関連分野の参考図書の紹介および書評 (非線形力学分野)

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非線形力学 流体力学関連

タイトル 著者 ISBN 出版社
An Introduction to Fluid Dynamics G.K. Batchelor 0521098173 Cambridge University Press
Introduction to Theoretical and Computational Fluid Dynamics C. Pozrikidis 0195093208 Oxford University Press
Physical Fluid Dynamics, 2nd ed.
(日本語訳:トリトン流体力学 第2版 (上)(下)
D.J. Tritton
(河村 哲也 訳)
0198544898
(上:4901092251)
(下:490109226X)
Oxford University Press
(インデックス出版)
Waves in Fluids James Lighthill 0521292336 Cambridge University Press
Wave Interactions and Fluid Flows Alex D. D. Craik 0521267404 Cambridge University Press
The Mathematical Theory of Permanent Progressive Water-Waves H. Okamoto and M. Shoji 9810244495 World Scientific
Vortex Dynamics P. G. Saffman 052142058X Cambridge University Press
A Modern Introduction to the Mathematical Theory of Water Waves R. S. Johnson 052159832X Cambridge University Press
The N-Vortex Problem --Analytical Techniques -- P. K. Newton 0387952268 Springer-Verlag
Environmental Stratified Flows Roger Grimshaw (ed.) 0792376056 Kluwer Academic Publishers
Topographic Effects in Stratified Flows Peter G. Baines 0521435013 Cambridge University Press
Nonlinear Dynamics and Chaos 2nd ed. J. M. T. Thompson and H. B. Stewart 0471876453 John Wiley & Sons
Perspectives of Nonlinear Dynamics Vols. 1 and 2
(日本語訳 「非線形力学の展望」 1,2)
E. A. Jackson
(田中 茂,丹羽 敏雄, 水谷 正大,森 真 共訳)
vol. 1 0521345049
vol. 2 0521354587
(vol. 1 4320033256)
(vol. 2 4320033264)
Cambridge University Press
(共立出版)
Dynamical Systems -- Stability, Symbolic Dynamics, and Chaos -- 2nd ed.
(日本語訳 「力学系」 上・下)
Clark Robinson
(國府寛司,柴山健伸, 岡 宏枝 共訳)
0849384958
(上 4431708251)
(下 443170826X)
CRC Press
(シュプリンガー・フェアラーク東京)
Topics in Bifurcation Theory and Applications, 2nd ed. G.Iooss and M.Adelmeyer 9810237286 World Scientific
Nonlinear Interactions -- Analytical, Computational, and Experimental Methods A. H. Nayfeh 0471175919 John Wiley & Sons
The Kinematics of Mixing : Stretching, Chaos, and Transport J. M. Ottino 0521363357 Cambridge University Press
流体力学(前編) 今井 功 4785323140 裳華房
流体力学 巽 友正 456302421X 培風館
画像から学ぶ流体力学 種子田 定俊 4254130406 朝倉書店
連続体の力学入門 (改訂版) Y. C. ファン著,大橋義夫,村上澄男,神谷紀生共訳 4563031674 培風館
流体における波動 日本流体力学会(編) 425413651X 朝倉書店
流れの安定性理論 巽 友正,後藤 金英 4782806132 産業図書
地球環境を学ぶための流体力学 九州大学大学院総合理工学府大気海洋環境システム学専攻(編) 442571301X 成山堂書店
地球流体力学入門 -- 大気と海洋の流れのしくみ -- 木村 竜治 4490200684 東京堂出版
力学系の基礎 國府 寛司 4254126727 朝倉書店
天体力学のパイオニアたち 上・下 F.ディアク,P.ホームズ著, 吉田春夫訳 4431711155 シュプリンガー・フェアラーク東京
コンピュータ・カオス・フラクタル -- 見えない世界のグラフィックス -- クリフォード・A・ピックオーバー著, 高橋時市郎, 内藤昭三 共訳 482690052X 白揚社
複雑性のキーワード 田口 善弘,三井 秀樹,高木 英行 4320016424 共立出版
複雑系の事典 -- 適応複雑系のキーワード150 -- 「複雑系の事典」編集委員会(編) 4254101694 朝倉書店
カオスのエッセンス E. N. Lorenz 著,杉山 勝,杉山 智子 共訳 4320008952 共立出版
カオスはこうして発見された ラルフ・エイブラハム、ヨシスケ・ウエダ編著 432003418X 共立出版
π 魅惑の数 ジャン=ポール・ドゥラエ著、畑 政義 訳 4254110863 朝倉書店
伝わる英語表現 長部 三郎 4004307651 岩波新書

計算物理学関連

タイトル 著者 ISBN 出版社
コンピュータシミュレーション 上田顕 4-254-12069-9 朝倉書店
コンピュータシミュレーションの基礎 岡崎進 4-7598-0856-6 化学同人
計算物理学 日本物理学会編 4-563-02199-7 培風館



タイトル An Introduction to Fluid Dynamics
著者 G.K. Batchelor
ISBN 0521098173
出版社 Cambridge University Press
コメント 流体力学に関する代表的名著。流体力学の種々の概念や流れについて,物理的な説明がしっかりされているので,きっちり読んで理解できれば大変役立つ本であるが,全体の分量がかなり多いので全部を読むのは大変。また,一部だけを拾い読みするにはあまり適さない。(船越)

タイトル Introduction to Theoretical and Computational Fluid Dynamics
著者 C. Pozrikidis
ISBN 0195093208
出版社 Oxford University Press
コメント 流体力学の本としては、これまでにあまりなかったタイプの本である。 すなわち、遅い流れ、境界層、対流、渦なし流れ、安定性、渦流れなどの 流体力学で重要な各テーマに対して、理論的な側面と数値計算の側面が バランス良く書かれている。そういう意味では、タイトルどおりの内容である。 理論的な面では、これまで得られた結果が、要領よく、かつ広範囲にわたって 書かれている。じっくり読むというよりは、参考書的に用いるのに適している。 数値計算の側面では、流体力学で用いる差分法、境界要素法、有限要素法などが、 関係の深いテーマのところで説明されており、結構参考になる(船越)。

タイトル Physical Fluid Dynamics, 2nd ed.
著者 D.J.Tritton
ISBN 0198544898
出版社 Oxford University Press
コメント 流体力学全般に関する本としては、特色ある構成となっている。 すなわち、最初から応力、運動方程式などを系統立てて 説明するのではなく、まずは管内流れ、円柱周りの流れ、 対流などの我々の身近にある重要な流れの特徴に ついて、多くの実験の図を引用しながら、数式をあまり 使わずに説明している。その後の第5章以下で、運動方程式、 実質微分、渦度などの重要な概念の説明がある。こういう構成は、 応力の記述などの基礎的な(はっきり言って面白くない)部分で 読者が挫折してしまうことを避けて、「まずは読者に流体運動の 面白さを知ってもらう」ことを意図していると思われ、その意図は 著者の適切なレベルの説明と豊富な図によって成功している。 また、数多くの興味ある流体現象について、実験・観測の多くの 写真を示しながら、すぐれた物理的洞察に基づく記述が 行われている。著者は残念ながら既に亡くなられたが、この本は 今後も長く読み続けられると思われる。また、最近日本語訳も 出版された。(船越)

タイトル Waves in Fluids
著者 James Lighthill
ISBN 0521292336
出版社 Cambridge University Press
コメント 流体中にはさまざまな波が存在するが、本書は、その中でも主に音波、水面波、内部波について書い てあり、流体中の波動に関する名著の1つであると思う。その内容の多くは線形理論に関するもので あり、非線形性の効果については、衝撃波に関する部分と epilogue における水面波等に関する部分 で少し書いてある程度である。波動の生成、伝搬(位相伝搬とエネルギー伝搬)、減衰、回折、散 乱、反射などの波動に関係した重要な概念がしっかりと説明されているが、かなりレベルの高い記述 もあり、きっちりと理解するにはかなり時間がかかる。  この本の著者であるライトヒル教授は、理論流体力学に関する偉大な研究者であり、1998年に亡く なられたが、その業績や人柄は例えば以下の文献に示されている(船越)。
'James Lighthill and his contributions to fluid mechanics', by TJ Pedley, Annual Review in Fluid Mechanics, vo.33, pp.1-41, (2001).
'Sir. James Lighthill F.R.S. (1924-1998), funeral address by Julian Hunt', Fluid Dynamics Research, vol.24, pp.iii-vi, (1999).
'追悼 Lighthill 先生', by 神部 勉, ながれ, vol.17, pp.383-385, (1998).

タイトル Wave Interactions and Fluid Flows
著者 Alex D. D. Craik
ISBN 0521267404
出版社 Cambridge University Press
コメント 現在セントアンドリュース大学の教授であるクレイク氏によって、主に波の非線形相互作用に関して書かれた本。著者の研究内容だけでなく、大変多くの参考文献が各々しっかりと位置付けられて記述されており、レビューとしても大変優れている。この本が出版された当時、こんなに詳細にわたるレビューを書ける人がいるのかと驚いた記憶がある。出版後15年以上たったので、「そろそろ第2版を書かないのですか」と聞くと、「書くのは大変なので、第2版は書かない」ということだった。やはり相当なエネルギーがいるのだと思う。私も、いずれこのような本を書いてみたいとは思っているのだが・・・(船越)。

タイトル The Mathematical Theory of Permanent Progressive Water-Waves
著者 H. Okamoto and M. Shoji
ISBN 9810244495
出版社 World Scientific
コメント 形を変えることなく一定速度で伝搬する波は定常進行波と呼ばれる。水面波の場合、微小振幅の定常進行波は簡単な正弦波として表せるが、大振幅の定常進行波は数値的にしか計算できない。この大振幅定常進行波の形(とくにそのような波が存在し得る極限での形)や安定性、分岐は、非線形水面波の理論的研究の中の一つの面白いテーマであり、これまで数多くの研究がされてきた。本書では、水面波(重力、表面張力、あるいはその両方を復元力とするもの)および界面波(密度の異なる2流体の界面の波)を中心として、その定常進行波のいろいろな計算法や、その中でも精度が良いと思われる方法を用いて著者が計算した波形や分岐について書かれている。本書は、物理的な立場ではなく、応用数学的な立場で書かれており、解の一意性や種々の分岐の起こる可能性、二次分岐についての議論が詳しく行われているのが特色である。水面波等の定常進行波の問題を数学的にきっちりと解析したい人には大変参考になる本である(船越)。

タイトル A Modern Introduction to the Mathematical Theory of Water Waves
著者 R. S. Johnson
ISBN 052159832X
出版社 Cambridge University Press
コメント 水面波に関する線形および非線形理論が、以下のかなり広い範囲の テーマについて書かれている。 edge wave, ship wave, hydraulic jump, Stokes wave, 弱非線形浅水波(K-dV eq.など), 波列(波束)の時間発展( Nonlinear Schrodinger eq.など), Davey-Stewartson eq., undular bore など
スケーリングや漸近展開などの、水面波の問題の定式化や理論的解析における 基本的な考え方が、かなり丁寧に説明されている上に、練習問題が多数 (250題程度)あるので、一人で学ぶのにも適している。学部4年生から 大学院修士課程程度に適したレベルである(船越)。

タイトル Vortex Dynamics
著者 P. G. Saffman
ISBN 052142058X
出版社 Cambridge University Press
コメント 流れの安定性、渦力学、非線形波動などの流体力学の多くの分野で重要な貢献を行った Saffman が「渦力学」について書いた本である。 渦力学の基礎的事項から始まって、点渦系、渦層、渦輪、有限の大きさの2次元渦領域 (vortex patch) などについて説明が行われている。 彼自身の研究もかなり含んだ多くの事項が簡潔に記述されているので、渦力学の基礎をある程度知っている人が読めば、渦力学に関するこれまでの研究の流れを概観する上で大変役に立つと思われる。ミスプリント等による誤りが若干あるようなので、注意が必要(船越)。

タイトル The N-Vortex Problem --Analytical Techniques --
著者 P. K. Newton
ISBN 0387952268
出版社 Springer-Verlag
コメント 非粘性流体での渦の振る舞いを調べるための手法としては、点渦モデル、楕円渦モデル、有限の大きさの一様渦度領域のモデル、vortex filament モデルなどがあるが、本書では、主に点渦モデル、楕円渦モデル、vortex filament モデルを扱い、これらの渦の振る舞いを、出来る限り力学系の理論を中心とした解析的な手法で示そうとしている。本書の特徴の1つは、著者らの研究を含む、球面上の渦の運動に関する記述がある点である(船越)。

タイトル Environmental Stratified Flows
著者 Roger Grimshaw (ed.)
ISBN 0792376056
出版社 Kluwer Academic Publishers
コメント 密度成層流体中の非線形波動の生成や伝搬に関する理論的研究によって 世界的に著名な R.Grimshaw が編者となって、成層流体における波動、 重力流、乱流、不安定などの8つのテーマについて、それぞれ1〜3人 の著者が書いている。
とくに内部孤立波については、基礎となる非線形波動の理論を Grimshaw 自身が解説しているほか、大気と海洋における内部孤立波についてのレビュー が、それぞれ1つの章を設けて書かれている。また、地形変化によって 作られる波の理論について、P.B.Smith が解説しているほか、成層流の 不安定性の理論について L.G.Redekopp が丁寧に解説している。大気・海洋 を中心とした成層流に関する系統的知識を得たいと思っている人に適当な本 である(船越)。

タイトル Topographic Effects in Stratified Flows
著者 Peter G. Baines
ISBN 0521435013
出版社 John Wiley & Sons
コメント 自由表面をもつ流体や密度成層流体が盛り上がった底面の上を流れるとき、波が発生したり跳水(hydraulic jump)と呼ばれる水面や等密度面の跳びが起こったりする。この本は、このような現象についての研究で有名な著者によって、理論と実験の両面にわたって書かれている。豊富な内容が簡潔にまとめられていて中身の濃い本であるが、理論の部分は結果の導出過程があまり詳しく書いていないところもある。従って、きっちり読んで理解するには時間がかかると思われる。ゼミ等で読むのに適した本である(船越)。

タイトル Nonlinear Dynamics and Chaos 2nd ed.
著者 J. M. T. Thompson and H. B. Stewart
ISBN 0471876453
出版社 Cambridge University Press
コメント 本書の第1版は1986年に出版され、カオスや非線形力学系について書かれた本の1つとして、かなり有名である。この第1版では、数学的にあまり難しいことは示さず、むしろ幾何学的な概念図や数値計算のデータを数多く用いて、非線形力学やカオスに関する理論で必要となるさまざまな概念を読者に理解させようとしているが、それはかなり成功しているように思える。また、最後の部分では、かなり具体的な応用例もいくつか示している。従って、理学系のみならず工学系の学生・研究者にとっても、カオスや非線形力学系の勉強をするために最初に読む本として適していると思われる。ただし一部のところでは、考えている問題の概念図、方程式、解軌道、注目すべき挙動などの多くの情報が1つの図に押し込まれており、それに対応する説明が本文中であまり詳しく書かれていない例が見られる。このような書き方でも、ある程度基礎知識のある読者だと大体理解できると思うが、初心者には理解しづらいのではないかと心配する。なお、この第1版の日本語訳は、「非線形力学とカオス」J.M.T.トンプソン、 H.B.スチュアート オーム社 (1988)として出版されている。
最近、2002年に、この本の第2版が出版された。第1版と比べて、本の性格や基本的な構成は変化していないが、67個の図が新たに掲載されたほか、具体的な変更箇所はかなり多い。まず第2版の最後に、力学系やカオスの理論において重要な用語の(一部は図を用いた)説明であるillustrated glossary が付け加わった。私がざっと見た感じでは、この glossary は初心者にとってかなり役立つと思われる。また Appendix において、18個の余次元1の分岐の現象論的な分類が新たにコンパクトな形で書き加えられ、これも役立つと思われる。さらに具体的な応用に関する Part 4 において、第1版の最後の2章が削除され、新たに第16章(Escape from a potential well) において、強制振動子系の複雑な挙動に関する、第1版出版以降の研究が書かれている。この章の内容は、興味深い図もたくさん掲載されており、かなり面白そうに思える。他にもいくつかの章で、新たな section が追加されている(船越)。

タイトル Perspectives of Nonlinear Dynamics Vols. 1 and 2
著者 E. A. Jackson
ISBN vol. 1 0521345049, vol. 2 0521354587
出版社 Cambridge University Press
コメント 分厚い2冊からなる非線形力学系とカオスに関する本である。まず、これだけの分量の本を書く著者のエネルギーに驚く。図がたくさん掲載されていて一見読みやすそうに思え、また著者はこの本は入門的な本であるとしているが、実際に読んでみると、記述のレベルは高く結構難しい。大学院生のゼミなどで読むのに良い本だと思うが、なにせ分量が多いので、何年かかけて読む覚悟が必要かもしれない。
なお、「振り子」という単語の複数形を、この本では Pendulums としている。これについては、Pendula ではないかと思って、あるイギリス人に聞くと、「本来は Pendula なのだが、最近は Pendulums が使われることもある」という返事であった。私の手元にある3つの英和辞典では、とくに複数形の記述はないので、Pendulums ということであろう。 ある文献データベースで、これらの単語がタイトルに含まれているという条件で検索すると、Pendulums を使ったものが16件、Pendula を使ったものが5件得られ、Pendulums の方が少し優勢なようである。数が少ないのであまりはっきりしたことは言えないが、研究分野や雑誌による明確な違いはとくに見られない。また、著者の所属する国による違いもとくに出てこない(船越)。

タイトル Dynamical Systems -- Stability, Symbolic Dynamics, and Chaos -- 2nd ed.
著者 Clark Robinson
ISBN 0849384958
出版社 CRC Press
コメント 数学的な立場から、力学系やカオスについてきっちりと体系的に勉強したい人に適した本。少なくと も前半の部分は、読者の基礎的な数学の知識をそれほど多く期待していない書き方であり、例えば、 定係数の線形連立常微分方程式の一般的な解法も、この種の本としては丁寧に書いてある。しかし一 方で、完備性、コンパクト性、測度などの用語の意味については知っているという前提で書かれてい るので、工学系の学生には取っつきにくいかもしれない。
日本語訳は、大変良くできていると思うが、第11章の「通有的」という言葉には少し戸惑った。 これは generic の日本語訳であり、私自身はこれまでジェネリックと片仮名で呼んできた。力学系 の分野では、英語のまま片仮名で呼ぶ言葉が多く、言葉は文化そのものの体現であるという意味から すると、日本人のこの分野の研究者はちょっと安易かなという気もしていた。適当な日本語訳があれ ば、日本語の文章ではそれを用いた方が良いと思う。そういう意味では、訳者たちの試みは評価でき る。しかしながら、平衡点の分類の中のサドルやノード、センターなどは片仮名のままである。これ らにも鞍点(あるいは鞍状点)、結節点、渦心点などの日本語訳があるわけだが、近年これらの用語 の使用頻度は下がっている。英語のテキストを使ったゼミで、学生が saddle の日本語訳を聞いたと きには「鞍点だが、サドルと呼ぶ方が多い」と答えるのだが、ちょっと寂しい。まあ、こういうこと を言い出すと、そもそも「カオス」と呼ぶのはけしからん、ということになってしまうのだが(船 越)。

タイトル Topics in Bifurcation Theory and Applications, 2nd ed.
著者 G.Iooss and M.Adelmeyer
ISBN 9810237286
出版社 World Scientific
コメント 分岐理論の研究で有名なIooss が Adelmeyer とともに執筆した、 分岐理論の基本的事項に関する本の第2版である。 平衡点に関する中心多様体定理、Normal form 理論、分岐理論 が述べられたあと、周期軌道に関する同様な理論が書かれている。 第2版では、ローレンツ系、ファン・デル・ポール系などに対する 8つの問題と、その解答が追加されており、具体的な問題に対する 上記の理論の適用のされ方をみることによって、内容の理解が深まる と思われる。ゼミのテキストとしても適している(船越)。

タイトル Nonlinear Interactions -- Analytical, Computational, and Experimental Methods
著者 A. H. Nayfeh
ISBN 0471175919
出版社 John Wiley & Sons
コメント 力学系システムが複数の固有モードを持つ場合に,各モードの 固有振動数が共鳴条件を満たす,いわゆる内部共鳴が起こると, モード間のエネルギーの移動が起こり,カオスや同期をはじめと する興味深い現象がいろいろと起こる。
本書は,そのような現象を記述する非線形モデル方程式の一般的 な導出方法をいくつか紹介した後,2:1内部共鳴,1:1内部 共鳴,3:1内部共鳴,外部共鳴(周期的強制力とある固有モードの共鳴) と内部共鳴の合併,複数の共鳴の合併の場合などについて,具 体的な実験例および理論・数値計算による研究の例を順次示して いる。すなわち,かなり一般的に使える(やや抽象的な)理論を 説明してから,個別の具体的な話に入るスタイルをとっている。 従って,この分野の初学者は,最初の非線形モデル方程式の一般 的な導出方法の説明の部分を理解するのに苦労するかもしれない。 具体例のところでは,振り子などの質点系,剛体系,さらには流 体系まで含めて大変膨大な量の研究がかなり丁寧に記載されており, 現在の研究の進展状況を調べるのに役立つ(船越)。

タイトル The Kinematics of Mixing : Stretching, Chaos, and Transport
著者 J. M. Ottino
ISBN 0521363357
出版社 Cambridge University Press
コメント 本書は、流体をカオス的に動かすことによって効率良く混合する、という「カオス混合」について書かれた最初の本格的な本である。これは10年以上も前に書かれたが、いまだに、カオス混合に関係するテーマについて系統的に書かれたものとしては、ほとんど唯一の本である(船越)。

タイトル 流体力学(前編)
著者 今井功
ISBN 4785323140
出版社 裳華房
コメント 流体力学に関する古典的名著の1つ。流体力学の各々の事項の記述が深い考察に基づいており、しっかりと流体力学をマスターしたい人に適している。通常の流体力学の教科書ではあっさりと書いてあるようなことについても丁寧に考察してある。例えば、応力テンソルの対称性が成り立つための条件についても、半ページにわたって考察がある。またこの本を読みこなすには、数学的な力が結構要求される。なお残念ながら、この本の後編はいまだ出版されていない。先日の講義で「後編は、目次まで掲載されているが出版はされていない」と学生に言ったところ、なぜか学生に受けて戸惑ってしまった(船越)。

タイトル 流体力学
著者 巽 友正
ISBN 456302421X
出版社 培風館
コメント 流体力学の教科書としては標準的な内容がきっちりと書かれている。多少高度な内容も含むが、その点に配慮すれば、1年間の「流体力学」の教科書として適している(船越)。

タイトル 画像から学ぶ流体力学
著者 種子田 定俊
ISBN 4254130406
出版社 朝倉書店
コメント 日本における「流れの可視化」の第一人者が、流れの実験における可視化写真をまとめて出版した本で、比較的コンパクトな体裁であるが、内容は大変豊富である。私も「連続体力学」の講義のときに、しばしばこの本の写真を学生に見せるために使わせていただいている(船越)。

タイトル 連続体の力学入門
著者 Y. C. ファン著, 大橋義夫, 村上澄男, 神谷紀生共訳
ISBN 4563031674
出版社 培風館
コメント 連続体力学に関する本は数多くあるが、その多くでは応力と変形(速度)の 説明の他は、ニュートン流体あるいはフック弾性体に関する個別的な 記述が詳しく行われている。 しかし、本書は、応力と変形(速度)の記述法の説明のあと、非ニュートン 流体、粘弾性・粘塑性を示す物質を含む広い範囲の連続体に対して 構成関係式や物質の力学的特性の説明を行い、 ニュートン流体とフック弾性体に関しては、最後の部分での各1章の 比較的簡単な説明にとどめている。この広い範囲の連続体 に対する構成関係式や物質の力学的特性の説明の部分が、この本の 特色の一つであり、「連続体」というものを広い視野から見るという 意味で興味深い本である。いわばレオロジーの本に近い側面も もっている(船越)。

タイトル 流体における波動
著者 日本流体力学会(編)
ISBN 425413651X
出版社 朝倉書店
コメント 日本流体力学会の企画による「流体力学シリーズ」の第1巻として1989年に出版された。7人の執筆者が分担して、流体中のいろいろな波動現象について書いている。本書の後半のランダムな波、いろいろな波動現象の記述の部分も面白いが、私にとって最も参考になったのは前半の線形波、弱非線形理論の部分であった。すなわち、群速度、分散性、反射、屈折等の線形波動の重要な基礎的な概念、および非線形性による波の突っ立ち、ソリトン、変調不安定、共鳴相互作用などの非線形波動の特徴的な挙動が要領良くまとめられている。また、流体運動に密接に関係した形で非線形波動について系統的に書かれた日本語の本は他にほとんどないので、私の研究室で非線形波動を研究テーマとして選んだ学生には、この本を読むことを勧めることが多い(船越)。

タイトル 流れの安定性理論
著者 巽 友正,後藤 金英
ISBN 4782806132
出版社 産業図書
コメント 本書は、日本語で書かれた流れの安定性理論に関する最初の専門書として、1976年に出版された。平行流の安定性および外力型不安定に関する、非粘性および粘性流体の線形理論が詳しく書かれており、いまだに専門書としての価値を保っている。数値計算の部分と非線形安定性理論の部分は、その後の研究の発展も大きく、この本を読んだだけでは現在の状況を見通すことは難しいかもしれないが、それ以外の部分は、流れの安定性の研究をめざす学生・研究者にとって大変役に立つと思われる(船越)。

タイトル 地球環境を学ぶための流体力学
著者 九州大学大学院総合理工学府大気海洋環境システム学専攻(編)
ISBN 442571301X
出版社 成山堂書店
コメント 地球環境問題を考える上では、熱、エネルギー、運動量、水、炭素などの循環や輸送、および回転や成層の効果を考えることが必須となる。そして、これらのことを表面的にではなく、具体的に数量化して考えるためには、流体力学の基礎方程式、基礎概念とその表す意味についてのしっかりした理解も必要である。この本は、流体力学の基礎的知識から地球環境問題で必要となる知識までを、相互のつながりも重視しながら、1冊に要領良くまとめてある。従って、これから地球環境問題を研究・勉強したいと思っている初学者や、流体力学の応用として地球環境問題をとらえて勉強していきたい者にとって、最適の本となっている。この本を書いた専攻には、地球環境問題を考えるために必要な幅広い分野の研究者が揃っているので、このような他にあまり例のないスタイルの本が書けたと思われる(船越)。

タイトル 地球流体力学入門 -- 大気と海洋の流れのしくみ --
著者 木村 竜治
ISBN 4490200684
出版社 東京堂書店
コメント 地球流体力学は、副題にもあるように、大気や海洋の流れを対象とする力学である。地球流体力学においては、気象学、海洋学と違って、考えている流れや流体現象を説明する最も簡単なモデルや実験が最も「えらい」のであり、実験や観測と理論における物理量の値の多少のずれはあまり重要でない、と私は思っている。この本は、そういう観点に立って、地衡流、内部重力波、ロスビー波、傾圧不安定などの大気や海洋のさまざまな現象をできるだけ簡単なモデルを使って(と言っても、それなりの数学的知識は必要であるが)、説明している大変優れた本である。なお、この本の著者の講演は、いつも上の意味で「えらい」ので、機会があれば是非聞くのが良いと思う(船越)。

タイトル 力学系の基礎
著者 國府 寛司
ISBN 4254126727
出版社 朝倉書店
コメント この本は「基礎」と書いてあるが、数学以外の分野の読者にとっては、結構レベルが高く、読みこな すのに時間がかかると思われる。しかし、その一方で、カオスに関係したことがらで、私がこれまで あまり深く考えてこなかったものや、本当にそれでよいのか気持ちが悪かったものについて、数学の 立場から、しかしさまざまな応用分野のことも念頭に置いて、丁寧に書いてあり、数学以外の分野の 読者が読んでも面白いと思われる部分が多い。具体的には、第2章でカオスを、(1)数学的解析の対 象としてのカオス、(2)数値実験の対象としてのカオス、(3)実験・観測の対象としてのカオス、の3 つに分けて議論している部分は面白いし、この区別は重要であると思う。また、カオスの数値計算と の関連で、第5章の擬軌道追跡性の話も面白いが、この性質を持っていることが示せる力学系がまだ まだ限られているのが現在の限界か(船越)。

タイトル 天体力学のパイオニアたち 上・下
著者 F.ディアク,P.ホームズ著, 吉田春夫訳
ISBN 4431711155
出版社 シュプリンガー・フェアラーク東京
コメント 大変面白い本である。天体力学における3体問題や、 そこから発生するカオスや安定性についての先駆的な 研究を行った人々の、研究者としてのすごさや それぞれの個性が臨場感あふれる表現で描かれている。 また、数式を一切使わずに、力学系の理論やカオスに 関連した種々の概念について、読者にイメージを持たせようと 努力している。もちろん、数式を使わない説明には限界があるが、 著者はかなりうまく説明していると思う(船越)。

タイトル コンピュータ・カオス・フラクタル -- 見えない世界のグラフィックス --
著者 クリフォード・A・ピックオーバー著,高橋時市郎,内藤昭三 共訳
ISBN 482690052X
出版社 白揚社
コメント フラクタル構造やカオスに関係した多数の図が掲載されていて、なかなか興味深い(船越)。

タイトル 複雑性のキーワード
著者 田口 善弘,三井 秀樹,高木 英行
ISBN 4-320-01642-4
出版社 共立出版
コメント Part 1 に書かれた「複雑性オーバービュー」が面白い。「複雑系科学」や「複雑系」に関する田口 善弘氏の考え方は,科学の広い分野に関する知識をもとに展開されており,なるほどという点も多く,大変興味深い(船越)。

タイトル 複雑系の事典 -- 適応複雑系のキーワード150 --
著者 「複雑系の事典」編集委員会(編)
ISBN 4254101694
出版社 朝倉書店
コメント 「複雑系」に関係する広範な範囲の分野から150のキーワードを選び、それぞれについて解説を加えた本である。流体力学関係では、例えば巽友正、高木隆司のお二人による「渦運動」、「カルマン渦列」、「対流」、「ナヴィエ・ストークス方程式」、「乱流」、「流体運動の複雑性」に関する解説が書かれている(船越)。

タイトル カオスのエッセンス
著者 E.N.Lorenz著,杉山 勝,杉山 智子 共訳
ISBN 4320008952
出版社 共立出版
コメント 原書は 'The Essence of Chaos', University of Washington Press, 1993 である。日本語訳のタイ トルは「ローレンツ カオスのエッセンス」とするべきかもしれないが、どちらが正しいのかはっき りしない。カオスの研究者なら誰でも名前を知っているローレンツが、カオスに関係したいろいろな ことがらについて書いており、読み物としてなかなか面白い。とくに面白いのは、第4章の「カオス との遭遇」の部分で、ローレンツがいわゆるローレンツアトラクタを発見したときの時代背景や彼自 身の興奮などが書かれており、大変興味深い(船越)。

タイトル カオスはこうして発見された
著者 ラルフ・エイブラハム、ヨシスケ・ウエダ編著
ISBN 432003418X
出版社 共立出版
コメント カオスの先駆者たちがカオスを発見・認識したときの興奮・感激や、他の研究者や学術雑誌の編集者のカ オスに対する反応などが書いてあって、なかなか面白い。また、発見に至るためには、それなりの素地が あることもよくわかる。すなわち、問題意識があったことや現象を見たときにその重要性を直感する力が あったからこそ、後世に残る仕事となり得たと思われる。最後の章のレスラーの文章は、かなり哲学的で 私には完全には理解できない。しかし、本当に新しいことを生み出すには、このような発想が必要なのか もしれない(船越)。

タイトル π 魅惑の数
著者 ジャン=ポール・ドゥラエ著、畑 政義 訳
ISBN 4254110863
出版社 朝倉書店
コメント 円周率πの定義から始まって、それに関係した遊び、 πの数値の記憶法、多数桁までの数値の計算競争の歴史 に至るまで、πにまつわる多くのことが書いてあって、 なかなか楽しい本である。とくに印象に残ったのは、 πの数値をできるだけ多くの桁まで求めようとした、 あるいはπの値の効率の良い計算公式を考え出した 人々の話であり、オイラー、ガウスなどの有名な数学者 のほかに、不遇な天才数学者、驚異的な暗算能力をもち それで生活していた人などが多数書かれている(船越)。

タイトル 伝わる英語表現
著者 長部 三郎
ISBN 4004307651
出版社 岩波新書
コメント 日本語と英語における表現法,考え方の違いについて書いてあり,面白い。我々が英語で文章を書こうとする際の基本的な考え方として参考になる。本書で紹介されている英英辞典 Collins COBUILD は,私も以前イギリスに長期滞在中に,語学教室の先生に勧められて買ったが,なかなかよい辞典だと思う。(船越)


タイトル コンピュータシミュレーション
著者 上田 顕
ISBN 4-254-12069-9
出版社 朝倉書店
コメント 多体系、特に液体、固体のような原子、分子の集合体を研究する有力な方法である分子動力学法とモンテカルロ法の入門書。材料科学、工学分野の専門課程の学生を対象として、シミュレーション法の基礎から具体例、さらに最近の発展までわかりやすく解説されている。 (金子)

タイトル コンピュータシミュレーションの基礎
著者 岡崎 進
ISBN 4-7598-0856-6
出版社 化学同人
コメント 固体、液体などの凝縮系のシミュレーションにおいて広く用いられている分子動力学法に関する入門書。学部上級学年、および大学院生を対象として、古典力学と解析力学の基礎事項、分子間力の求め方、さらにシミュレーションの原理、方法論から計算の実際まで系統的に解説されている。(金子)

タイトル 計算物理学
著者 日本物理学会編
ISBN 4-563-02199-7
出版社 培風館
コメント 物理学の研究において、理論、実験に並び第3の研究手段として確立された「計算機実験」についてわかりやすく紹介した解説書。分子動力学法とモンテカルロ法の基礎事項の紹介に始まり、物性物理学、流体、プラズマ物理学、また、素粒子、宇宙物理学等の諸分野における代表例が紹介されている。(金子)